息子こつぶに発達障害(自閉症スペクトラム)の診断がつくまでの話です。
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息子は0歳8か月頃から理学療法(PT)を受け始めました。
理学療法とはリハビリテーションのひとつです。くわしくは→日本理学療法士協会 理学療法とは
息子の場合は運動発達の遅れとズリバイが「左右非対称」だった事が気になり調べた結果「理学療法」にたどり着きました
しかし理学療法や作業療法を受けられる病院は限られており、主治医の病院にはその設備がありませんでした
そのため主治医に相談した上で理学療法を受けられる療育センターを受診しました。
その頃の息子は運動発達の遅れや反り返りの強さ、ズリバイの左右非対称に加えて、とにかく「回るもの」に執着するようになっていました。
自閉症スペクトラムの特性の1つとして「同じ動きをひたすら繰り返す行為」(常同行動)があります。
手をひらひらさせる
ぐるぐる回転する
ぴょんぴょん跳ねる
同じところを行ったり来たりする
これらの行動があげられますが、1歳前後の息子はヒマさえあれば延々とおもちゃの車をひっくり返してタイヤを回し続けるのが好きでした。
「タイヤを回す」ことを心配される親御さんもいらっしゃるかもしれませんが、定型発達のお子さんも発達の過程でタイヤ回しなどの行動をする子はいっぱいいます。
「タイヤ回しをすること」そのものが自閉症に直結するわけではありません。
息子の場合はタイヤ回しをひたすら繰り返し続ける「その執着っぷり」の他に、自閉症かも!?と思われる特性がいろいろ出ていました。
当時の私は息子の「脇目もふらず延々と続くタイヤ回し」を見るととても不安な気持ちになり、いつもその姿を見るのが苦痛でした。
もうやめて…
それ以上タイヤを回すのはもうやめて…!
実際息子に涙目で「もうやめて…」と言った事は1回や2回ではありませんでした。
さて、療育センターの医師の話に戻ります。
はじめて行く療育センターは主に「運動発達に遅れがある子」が通う場所で、想像よりもずっと大きな建物でした。
一方で建物の中はシーンと静まり返っていて、診察を待っている間はとても緊張した事を覚えています。
たくさんの絵本やおもちゃが待合室に置いてあり、気を紛らわせる為にいろいろ見ていると…
診察室から迎えに来てくれた医師がいつの間にか後ろに立ってました。
一緒に診察室に入り問診が始まりました。
その間息子は看護師さんからおもちゃをいくつか出してもらい遊んでいました。
そしてその中に車のおもちゃがあったのです…。
へー、タイヤ回すの得意なんだね!
うん、よく回ってる〜
そうなんです、これも気になっていて…
1度回し始めるととにかく止まらなくてずっとやってるんです
やはり発達障害の特性のひとつでしょうか
回す事自体はこれくらいの子どもによくあることなんだけどね
ただ、お母さんの話と今日のこつぶくんの様子を見る限り
「自閉傾向」はあるなぁ
(ガガーン!やっぱりそうなのか…自閉傾向……)
なんだかんだで医師の口から「自閉傾向」と言われたのは初めてだったので、ショックを受けました。
こんな事言っていいのかわからないのですが…
この子がタイヤに執着してずっと回し続ける姿を見ると
「人に興味がなくてこのまま一生タイヤを回し続けるんじゃないか」
というとてつもない恐怖と底なしの不安にかられてしまいます
そんな私に医師は言いました。
タ…タイヤ屋さん………!?
うん、タイヤ屋さん!
これだけ夢中で回せるんだもん
タイヤ屋さんいいじゃない、僕は好きだけどな
あ、それかもしかしてタイヤ回しながら物理学の勉強してるのかもよ?
あはは…そ、ソウデスネー…
その時は「自閉傾向がある」と言われた事がショックで先生の言葉を適当に流してしまいました。
そしてぼんやりと息子の未来を憂いながら帰宅したことを覚えています。
あの時は正直「いきなりこの先生は何を言ってんじゃ!」と思ってしまった私です
あの初診の日から3年以上たち、何回も先生とお会いしてその人となりに触れ、今の私ならあの時の先生の言葉の本当の意味がわかります
私は車のおもちゃで「普通に」遊べずタイヤばかり回し続ける息子を見て、「当たり前に車を車として遊べる子」になってほしいと思っていました。
障害が無いほうがいい、普通になってほしいそればかり考えていました。
でも診断がついて、時間をかけていろいろ受け入れる事が出来るようになってきて、息子は息子のままでいいと思えるようになった頃、先生の言葉がやっと理解出来ました。
先生が言いたかったのは
「障害の有無よりも、普通かどうかよりも、その子が自分らしくいられること、そしてそんな場所があることが大切」
きっとそういう事だったんですね。
「療育センター」という場所でたくさんの子ども達が大きくなっていく姿を長年見て来た先生だからこそ「タイヤを回すのが得意ならタイヤ屋さんになればいい」と声をかけてくれたんだと思います
大事なのは普通であるかどうかではなくて、その子がその子らしくいられるか、そんな場所があるかどうか
きっと息子に診断がつかなかったら私はその考えに辿りつく事はできなかったと思います
今までショックな事、不安な事、傷つく言葉…
本当にいろいろありましたが、それ以上に私にたくさんの気づきをくれる人や言葉や出来事がありました
それらのすべてに感謝して、息子が将来自分らしくいられる場所を見つけられるよう全力でサポートして行きたいと思ったのでした
▼管理人オススメ書籍▼
自閉症の作家、東出直樹さんの伝記です
普通って何だろうと思った時に読みたい一冊
私も読んで価値観が変わりました
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今思うと息子が0歳の頃、私はどうにかしてを「普通の子」にしたいと強く思っていました
「普通がいちばん」「発達障害じゃなければいいのに」そう思っていました
そんな私に療育センターの医師が「気づき」をくれたエピソードをお話ししたいと思います